qmk_firmware/ja/i2c_driver.md

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I2C マスタドライバ :id=i2c-master-driver

QMK で使われる I2C マスタドライバには、MCU 間のポータビリティを提供するための一連の関数が用意されています。

I2C アドレスについての重要なメモ :id=note-on-i2c-addresses

このドライバが期待する全てのアドレスは、アドレスバイトの上位7ビットにプッシュする必要があります。最下位ビットの設定(読み込み/書き込みを示す)は、それぞれの関数によって行われます。データシートやインターネットで列挙されているほとんど全ての I2C アドレスは、下位7ビットを占める7ビットとして表され、1ビット左(より上位)にシフトする必要があります。これは、ビット単位のシフト演算子 << 1 を使用して簡単に実行できます。

これは、呼び出しごとに以下の関数を実行するか、アドレスの定義で1度だけ実行するかどちらかで行うことができます。例えば、デバイスのアドレスが 0x18 の場合:

#define MY_I2C_ADDRESS (0x18 << 1)

I2C アドレスと他の技術詳細について、さらなる情報を得るためには https://www.robot-electronics.co.uk/i2c-tutorial を見てください。

使用できる関数 :id=available-functions

関数 説明
void i2c_init(void); I2C ドライバを初期化します。他のあらゆるトランザクションを開始する前に、この関数を一度だけ呼ぶ必要があります。
i2c_status_t i2c_transmit(uint8_t address, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); I2C 経由でデータを送信します。アドレスは方向ビットのない7ビットスレーブアドレスです。トランザクションのステータスを返します。
i2c_status_t i2c_receive(uint8_t address, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); I2C 経由でデータを受信します。アドレスは方向ビットのない7ビットスレーブアドレスです。 length で指定した長さのバイト列を data に保存し、トランザクションのステータスを返します。
i2c_status_t i2c_writeReg(uint8_t devaddr, uint8_t regaddr, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); i2c_transmit と同様ですが、 regaddr でスレーブのデータ書き込み先のレジスタを指定します。
i2c_status_t i2c_readReg(uint8_t devaddr, uint8_t regaddr, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); i2c_receive と同様ですが、 regaddr でスレーブのデータ読み込み先のレジスタを指定します。
i2c_status_t i2c_ping_address(uint8_t address, uint16_t timeout); I2C アドレスをテストします。アドレスは方向ビットのない7ビットスレーブアドレスです。

関数の戻り値 :id=function-return

void i2c_init(void) を除く上にあるすべての関数は、次の真理値表にある値を返します。

戻り値の定数 説明
I2C_STATUS_SUCCESS 0 処理が正常に実行されました。
I2C_STATUS_ERROR -1 処理に失敗しました。
I2C_STATUS_TIMEOUT -2 処理がタイムアウトしました。

AVR :id=avr

設定 :id=avr-configuration

I2Cマスタドライバを設定するために、次の定義が使えます。

変数 説明 既定値
F_SCL クロック周波数 (Hz) 400KHz

AVR は通常 I2C ピンとして使う GPIO が設定されているので、これ以上の設定は必要ありません。

ARM :id=arm

ARM の場合は、内部に ChibiOS I2C HAL ドライバがあります。この節では STM32 MCU を使用していると仮定します。

設定 :id=arm-configuration

ARM MCU 用の設定はしばしば非常に複雑です。これは、多くの場合複数の I2C ドライバをさまざまなポートに対して割り当てられるためです。

最初に、必要なハードウェアドライバを有効にするために mcuconf.h ファイルをセットアップします。

変数 説明 既定値
#STM32_I2C_USE_XXX ハードウェアドライバ XXX の有効化/無効化(すべてのドライバを明示的にリストアップする必要あり) FALSE
#STM32_I2C_BUSY_TIMEOUT レスポンスの受信がない場合に I2C コマンドを中断するまでの時間 (ms) 50
#STM32_I2C_XXX_IRQ_PRIORITY ハードウェアドライバ XXX の割り込み優先度(上級者向けの設定) 10
#STM32_I2C_USE_DMA MCU がデータ送信を DMA ユニットにオフロードする機能の有効化/無効化 TRUE
#STM32_I2C_XXX_DMA_PRIORITY ハードウェアドライバ XXX に使用する DMA ユニットの優先度(上級者向けの設定) 1

次に halconf.h ファイル内で #define HAL_USE_I2CTRUE にします。これにより ChibiOS が I2C ドライバを読み込みます。

最後に、使用したい I2C ハードウェアドライバに応じて正しい GPIO ピンを割り当てます。

標準では I2C1 ハードウェアドライバが使われます。もし他のハードウェアドライバを使う場合、 config.h ファイルに #define I2C_DRIVER I2CDX を追加します( X は使用するハードウェアドライバの番号です)。例えば I2C3 を有効化する場合、config.h ファイルに #define I2C_DRIVER I2CD3 と定義します。これにより QMK I2C ドライバと ChibiOS I2C driver が同期されます。

STM32 MCU では、使用するハードウェアドライバにより、さまざまなピンを I2C ピンとして設定できます。標準では B6, B7 ピンが I2C 用のピンです。 I2C 用のピンを設定するために次の定義が使えます:

変数 説明 既定値
I2C1_SCL_PIN SCL のピン番号 B6
I2C1_SDA_PIN SDA のピン番号 B7

ChibiOS I2C ドライバの設定項目は STM32 MCU の種類に依存します。

STM32F1xx, STM32F2xx, STM32F4xx, STM32L0xx, STM32L1xx では I2Cv1 が使われます。
STM32F0xx, STM32F3xx, STM32F7xx, STM32L4xx では I2Cv2 が使われます。

I2Cv1 :id=i2cv1

STM32 MCU の I2Cv1 では、クロック周波数とデューティ比を次の変数で変更できます。詳しくは https://www.playembedded.org/blog/stm32-i2c-chibios/#I2Cv1_configuration_structure を参照してください。

変数 既定値
I2C1_OPMODE OPMODE_I2C
I2C1_CLOCK_SPEED 100000
I2C1_DUTY_CYCLE STD_DUTY_CYCLE

I2Cv2 :id=i2cv2

STM32 MCU の I2Cv2 では、信号のタイミングパラメータを次の変数で変更できます。詳しくは https://www.st.com/en/embedded-software/stsw-stm32126.html を参照してください。

変数 既定値
I2C1_TIMINGR_PRESC 15U
I2C1_TIMINGR_SCLDEL 4U
I2C1_TIMINGR_SDADEL 2U
I2C1_TIMINGR_SCLH 15U
I2C1_TIMINGR_SCLL 21U

STM32 MCU では GPIO ピンを設定するとき、別の「代替機能」モードを使うことができます。これは I2Cv2 モードで使われるピンを変更するために必要です。適切な設定値は、使用している MCU のデータシートを参照してください。

変数 既定値
I2C1_SCL_PAL_MODE 4
I2C1_SDA_PAL_MODE 4

その他 :id=other

void i2c_init(void) 関数は weak 属性が付いており、オーバーロードすることができます。この場合、上記で設定した変数は使用されません。可能な GPIO の設定については、 MCU のデータシートを参照してください。次に示すのは初期化関数の例です:

void i2c_init(void)
{
  setPinInput(B6); // Try releasing special pins for a short time
  setPinInput(B7);
  wait_ms(10); // Wait for the release to happen

  palSetPadMode(GPIOB, 6, PAL_MODE_ALTERNATE(4) | PAL_STM32_OTYPE_OPENDRAIN | PAL_STM32_PUPDR_PULLUP); // Set B6 to I2C function
  palSetPadMode(GPIOB, 7, PAL_MODE_ALTERNATE(4) | PAL_STM32_OTYPE_OPENDRAIN | PAL_STM32_PUPDR_PULLUP); // Set B7 to I2C function
}